他人の配偶者をどう呼びますか?


アンケート「日本人による配偶者の呼び方(日本人の方へのアンケート)」は終了しました。

200名近い方々が様々な貴重なご意見をいただき感謝いたします。

 


2015年9月4日

 

いつも困っているのは、話相手や他の人の配偶者の呼び方です。

話相手の配偶者の名前が分かっている場合は、「お宅の和男さん」とか言えば通じますし、

また、第三者の配偶者を指す場合、「阿部真由美さん」などと言えば分かりますよね。

 

でも、分からない場合、皆さんはどう言いますか。

 

 一般的には「ご主人」「旦那さん」や「奥さん」などと言いますよね。

私も若い頃は何も考えずにそう呼んでいました。

でも、ジェンダーを意識し始めてからは、そういう従来の呼び方には非常に抵抗を感じ、

そう言わなければならない状況におかれた自分に

うしろめたささえ感じてしまうようになりました。

 

フェミニストの間では「パートナー」という呼び方が一般的ですが、

日本語では、例えば仕事のパートナーやダンスのパートナーなど、

結婚には関係ない相手でもこの呼び方をするので、

私は、なんとなくしっくりいかないのです。

それでも、ある期間、「パートナー」を使ってみていました。

でも、必ずといって「え?」と相手から聞き返されるので、

説明するのが面倒やら、なんだかその場のコミュニケーションが一旦止まってしまって

気まずくさえなったこともあり、、、

 

だから、相手の年齢や人柄や主義などをよく考えて、

仕方ないけど、従来型の「ご主人」や「奥さん」を使ってみたり、

思い切って「パートナー」を使ってみて反応をみたりして、

結構、四苦八苦してきました。

そんなときに、私が所属している「日本語ジェンダー学会」から依頼されて書いたのが

次のエッセイです。

 

https://www.langgender.jp/gender-essay/otto-san-tsuma-san/

 

これを読んでご覧になって、皆さんはどう感じられたでしょうか。
5年前に書いたものですが、それ以後、日本社会の状況はまったく変わっていません。

 

思い切って「夫さん」や「妻さん」を使ってみても、

殆どの場合は変な顔をされるのが落ちです。

それでも、相手がジェンダー意識度が高い人だったら、

まだ、懲りずにこの言葉を使ってみてはいますが、

まだまだ、市民権を取るまでの道のりは長いようです、、、

 

話は飛びますが、実は、アメリカ在住の知り合いの男性が
最近、合衆国が同性同士の結婚を認めるという法律改正を行ったのを受けて

目出度く正式に結婚しました。

 

彼に英語では、ファーストネームで呼ばない場合、

対外的にmy partnerを使うのかと聞いてみたら、

「いや、husbandですよ」とのこと。

 

そうか、男性同士ならどちらもhusband、

女性同士ならどちらもwifeとなるのか、、、

 

英語ならyour husbandとか、her/his wifeでいいわけだから、

日本語のようなジェンダーの問題はありません。

 

言葉狩りはしたくないので、その場の雰囲気に合わせて

融通無碍に波風立てないように対応はしておりますが、

それでも、まだ、「ご主人」や「奥さん」を使わなければならない時は、

某らの違和感があるのは否めません。

このエッセイの最後にも書きましたが、
メディアで取りあげてくれると、
例えば、TVドラマなどで「夫さん」や「妻さん」を使う主人公が出て来れば、
案外、流行語のようになって、うまくいけば定着するかもしれません。

誰か、こういうことに関心を持っている脚本家とかTVプロデューサーはいないでしょうかね。

追記:2015年10月17日

このエッセイを書いてから1ヶ月半ほど経ちました。
「夫さん」「妻さん」の他に、
どちらも自分にはあてはまらないと考える人たちのことも考えると、

勿論、その他の分類があってもいいはずですね。

その他の分類は、多種多様であるでしょうし、

男女の性別に限らない生き方や
結婚という形にこだわらない生き方もあります。

そのような人たちには、例えば「パートナー」のような無性別で

形式にとらわれない柔軟性のある言い方も

いいかもしれませんね。

コメントをお書きください

コメント: 10
  • #1

    多摩の妻さん (土曜日, 05 9月 2015 18:01)

    おもしろい視点ですね。
    今まで別に何も考えずに使っていましたが、
    でも、確かに「主人」や「奧さん」には隠れた意味がありますね。
    ご提案の「夫さん」「妻さん」が英語のhusbandやwifeにあたるなら、
    そういう呼び方が一般的になってもいいと思います。
    私もちょっと使って見てまわりの反応を観察してみます。

  • #2

    どらやき (木曜日, 15 10月 2015 09:02)

    自分の場合ですが、親しくない相手の配偶者について言及する際、どうしても「ご主人」もしくは「奥様」を使用します。理由は先生が書かれている通り、適切な表現が見当たらないからです。それに「ご主人」と「奥様」には敬称ではないですが、話す相手のパートナーを尊重する意味もあるのではないかと感じているのも理由です。そうして軽く敬意を表することで、話している相手と自分の距離を一定に保っている(自分の中でそんなに親しい相手ではないと認識している)のかなと思います。

  • #3

    水本光美 (木曜日, 15 10月 2015 16:44)

    多摩の妻さん、

    早々にコメントを頂きどうもありがとうございました。

    ジェンダーが潜んでいる男女を区別することばは、職業名では早々と改正されて
    「看護婦」や「看護夫」が「看護師」となり、
    スチュワーデスやスチュワート(日本では今でもあまりいませんが)などが
    男女共「客室乗務員」などと変わったのですが、

    どうも日頃使っていて身近なことばとして習慣として染みついているものは、
    なかなか変わりませんね。
    配偶者の呼び方はその良い例ですが、
    「主人」「家内」「奥さん」「旦那さん」「嫁」などの本来の意味を考えると
    日本語でも、もうそろそろ、こういうことばが変わってきてもいいのではないか
    と思う、今日この頃です。


  • #4

    水本光美 (木曜日, 15 10月 2015 17:58)

    どらやき さん、

    コメントどうもありがとうございました。

    確かに「ご主人」や「奥様」には「ご〜」や「〜様」などの丁寧語としての
    接頭語や敬称としての接尾語がつけられているので、
    「尊重する意味」と感じられるのも無理ないと思います。

    実は、私自身もアメリカに行くまでは同じように尊敬語として受け取ってました。
    私がこれらのことばの意味に初めて気づかされたのは、
    恥ずかしながら、アメリカの大学で教えていた頃、
    女子学生たちに質問されたのがきっかけでした。

    次のコメントにその出来事について書きますね。

  • #5

    水本光美 (木曜日, 15 10月 2015 18:15)

    アメリカの大学で女子学生たちに言われたのは、次のようなことです。

    「"ご"がついていても、その基本となる「主人」というのは、
    my master、my landlord, つまり私が仕える人、という意味ですよね。」

    「それに、"様"がついていて、一見とても丁寧だけど、
    "奧"というのは、家の奧にいつもいて表には出て来ない人、という意味。
    女は外に出られないということを意味しているんじゃないですか?」

    それに対して私は広辞苑を持ち出して
    「でも、辞書には、どちらもはっきりと「尊敬語」と書いてありますよ。」

    「それに、"奧"っていうのは、昔の宮中の貴人の妻の居所のことだし、
    万葉集にも"吾が奧妻"って『心の奥深く大切に思う妻』っていう
    意味で使われているんですよ。『はしけやし(愛しい)吾が奧妻(心から愛する妻)』って
    大伴家持も『恋緒を述ぶる歌』で詠んでいるんですよ」
    と万葉集まで持ち出して反論はしてみたのですが、

    「いくら"様"や"さん"をつけても、男は女の上、夫は妻が使える人、
    女はいくら大切にされても奧にしまわれて外には出られない
    いつも家で待っている人、男の所有物、というのは変わらないでしょう?
    本来の意味は変わらないんだから、おかしくありませんか」

    とまあ、厳しくやられてしまったのです。

    でも、よく考えてみると、学生たちの疑問はもっともなことでした。
    どんなに尊敬の意味をもつ接頭語や接尾語をつけたとしても、
    もとの語にそういう意味が潜んでいるとしたら、
    彼らがそう感じるのも当然でした。

    文化を外から客観的に見て感じたからこそ、彼らは疑問に感じたのでしょうね。
    私がアメリカに行って2年目のことでした。

    それ以来、私は「こういう表現は確かに差別意識が含まれてはいますが、
    あまりにも長く人びとの生活の中で使われてきたために、
    現実的に日本では、もとの意味からことばだけが離れてしまい、
    あまり意味は考えずに一般的に使われているようです」

    とか何とか、、、ちょっと苦しい説明をしてきました(笑)






  • #6

    どらやき (金曜日, 16 10月 2015 09:30)

    返信ありがとうございます。言語を学ぶ学生(この場合アメリカの女子学生さんたち)が言葉の定義に対して厳密であるということはいいことですよね。
    「主人」と「奥」の持つ意味をとらえた上で使いたくないという人はいるでしょうし。
    ただ、目上の人に対しては「ご主人」「奥様」で無難に済ませたいというのが本音です。

  • #7

    水本光美 (金曜日, 16 10月 2015 23:21)

    どらやき さん、

    そうですね。実はそういう私も、年配の方々に対しては、
    同様に「ご主人」や「奥様」を使うことが多いです。
    他の言い方を試しても波風立てるだけという場合が多いということもあり、
    辛いところです。


  • #8

    HUSBAND (土曜日, 29 4月 2017 23:09)

    英語husbandも、同様に「家の主人」を指しているのですが。英語圏およびアメリカ人に対しても、同じ主張をするのでしょうか。古英語:hūsbonda(家長)<古ノルド語:húsbóndi(hús(家)+bóndi(家主))。日本語以上にジェンダーの問題はありありだと思います。

  • #9

    水本光美(Terumi Mizumoto) (日曜日, 27 8月 2017 17:47)

    HUSBAND さん、

    随分前にこのコメントいただいていたのに、お返事が大変遅くなりすみませんでした。

    確かに英語のhusbandの語源はおっしゃる通り、古ノルド語のhúsbóndiです。英英辞書によると、「家を管理する人、家の主人、家主」と説明してありますね。また、このhúsbóndiのbóndiは、元来「till(土地を耕す)やcultivate(栽培する)」という意味なので、「土地と家畜などの資産を持つ者(主に農民や職人)」の意味に由来します。

    wifeも古期英語 のwīf(女)に由来しており、「女」を意味していますが、15世紀には「女主人」という意味でも使用されはじめていたようなので、そうなるとhusbandと同等とも言えますね。

    古くは、住める場所を男(たち)が確保してそこに気に入った女(たち)を連れてきて住まわせ(もしかしたら、女の方が勝手に入って来て住むようになったかもしれませんが)、家族を作るという古代からの歴史を考えると、昔は、「husband」は「家の主人」として力の弱い女を従属させていたのかもしれません。

    フランス革命後でさえも市民は権利を獲得しましたが、女性はまだまだ虐げられた存在でした。そういう意味では、おっしゃる通り、日本語の「主人」と変わりないでしょう。

    ただ、忘れてはならないのは、日本語の「主人」には「家の主」の意味の他に、元来、a.「 一寺一山の棟梁、または君主」 b.「人を従属または隷属させている者、他人を使用している者」などの意味があり、君主制度の時代では長い間 b.の意味で使用され、それが家長制度に引き継がれてきたという歴史に基づいているということです。

    そして、その意味は現在でも生きており、英語のhusbandには、そのような意味は含まれていない、というところに大きな違いがありそうです。このことは英語圏で長年仕事をして来た日本人たちやアメリカ人、イギリス人の言語学や英語学の専門家などにも確認しました。

    例えば、日本語では奉公人が自分が仕えている人のことを「ご主人さま」とは言いますが、英語ではhusbandとは言わないわけです。masterでしょうか?husbandは家庭内の夫婦関係だけで使用しますから。そこが英語と日本語が決定的に異なるところではないでしょうか。

    ということで、長くなりましたが、私は英語の”husband”が日本語の”主人”以上にジェンダーの問題がありありだ」とは思えないのです。

  • #10

    水本光美(Terumi Mizumoto) (火曜日, 29 8月 2017 02:14)

    自身の配偶者のことを女性が「主人」や「旦那」と言及することを客観的に見ると、妻が自分の夫を「私が仕える人」「私が従属する人」「私に施しをしてくれる人」「私のパトロン」などと言っているのと同じに聞こえ、私としては違和感があるわけです。

    でも、ご本人が本当にそう思っている場合や「稼いで養ってくれているから」などと思って、ご自身の夫を「主人」と呼ぶのはご本人の選択で自由だとは思いますので、私はそこは本人の考え方次第だと思ってはいます。

    ただ、他人の配偶者を「ご主人」と言及することを「尊敬語」であるからという人がいますが、それは勘違いです。ネットを検索しても「"主人"や"ご主人"は正式な言い方です!」などとおっしゃっている方がいますが、そういう言説は不確かな思い込みではないでしょうか。

    単に「ご〜」や「〜さま」という丁寧な接頭語や敬称を用いても、中身の「主人」や「旦那」の意味には、そのような主従関係や差別的な意味が潜んでいるわけですから、単に「敬語」だと思ってそう呼んでいる場合は、もう一度、本来の意味をよく考えて、気をつけたほうが良いのではと思います。

    少なくとも、自身の配偶者を「主人」ではなく「夫」と言う人に向かっては、「ご主人」と言わないほうがいいのではないかと思います。

    また、「主人」という呼称ですが、

    現に、明治後半頃まで、世間一般の女性既婚者は配偶者のことを「主人」とは呼ばず、「夫」または「良人(おっと)」や夫の姓を用いて言及していました。「主人」と呼ぶようになったのは、それ以後で、「夫」と同じくらい使われるようになったのが戦後です。図らずも戦争時代を経て「主人」と呼ぶ人が増えたのには、何か理由がありそうです。